もえぎいろ。
萌黄色、あるいは、萌木色とも書く。
黄色の強い緑色なので「萌黄」。
平安時代から用いられたこの名の色は、
時に老いを隠す変装にも使われるほど
ひと目で若さを表現できる色だった。
一方、「萌木」色とは、
若芽の萌え出た木、新緑の色からつけられた名と考えられる。
そんな若さ感じる「もえぎ色」。
その名を聞くと、子どもの頃、
友だちの誕生会におよばれして行ったことを思い出す。
誕生会は春夏秋冬、それぞれの季節にあったはずなのに、
思い出すのは、新緑の中で、おにごっこやかくれんぼした、
もえぎ色の記憶なのだ。
誕生会で集まる友だちは、クラスの中のひとつのグループであり、
その固い結びつきの中にいられることが
安心感でもあり、息苦しさでもあった。
そこで笑ったこと、喧嘩したこと、経験したことは、
その当時の世界のすべてだった。
成長するにしたがって、世界は少しずつ広がり、
グループにとらわれることが居心地悪くなっていった。
ここがダメでも、別の場所があり、
変わること、離れることで、
ひととき胸に痛みがはしっても、
求めれば、新しい世界が大きく手を広げて
待っていてくれることを知った。
幼くて、たよりなくて、
小さな世界で悩んで、
でも、若くエネルギーに満ちて輝いていたあの頃。
その姿が萌え木と重なって見える。
だから、懐かしく、やさしく、愛しく見えるのかもしれない。
生きてみなければ、わからないことが
まだまだいっぱいあるよ、
と、若く瑞々しいもえぎ色が
葉を揺らせ、くすぐるように笑いながら、
今年もさわさわと語りかけてくれる。