きら、星の色

「何億光年輝く星にも寿命があると…」。
山口百恵のラストソング「さよならの向こう側」の
歌詞に、抱えきれない時間と星との距離に驚いた十代の頃。

それまでは、星がそんなに遠いとは想像もせず、
「寿命」を「授業」と聞き違えていたほどに
無知だった。

星の色は、寿命の長さによって異なる。
若い星ほど青白く、老いた星ほど
赤みがかっているという。

鶏冠石(けいかんせき)色は、明るい橙色。
「鶏冠石(けいかんせき)」という
鶏のトサカのような赤い鉱物を
粉末にした顔料の色である。

先日、上野の東京文化会館のステージ裏を
ガイド付きで見学できるツアーに参加した。

夜の部をあえて予約したのは、
この建物の照明がガラスに反射して、
上野公園へと広がっていくように見える様子、
「天の川」と呼ばれる、
鶏冠石色の星が輝く景色が見たかったから。

ステージ裏の壁には、
まさに綺羅、星のごとく有名な出演者のサインが
所狭しと書かれていた。


カーテンコール体験もさせてもらった。
幕の間からステージに出て、
眩しいほどの照明を全身で感じる。
スポットライトも、星、だった。

ステージ、照明、サイン、といった
晴れがましい場所に立ったことはない。
いつも遠くから眺めている側だった。

遠く眺める、といえば
故郷を離れて、最初の帰省した夜、
見上げた空の星が、あまりに近くて
驚いたことがある。

都会よりも空が低く、
星々は鮮やかに群をなし、美しく明滅していた。
わーっ! と、小さく叫んで
静かな花火を見るように星空を見上げていた。

鶏冠石は、かつては日本の花火の原材料に
使われていたのだという。
湿気に弱く、置きっ放しにしておくと、
変色してボロボロと崩れてしまうらしい。

文化会館で見つけた、たくさんの星は
鶏冠石色。
たくさんの星は、たくさんの人たちの夢に見えた。

私の夢は、置きっ放しにしていないだろうか。
ボロボロと崩れてしまってはいないだろうか。
星を見失わないように、努めているだろうか。

「さよならの向う側」へと消えた山口百恵も、
たくさんの感謝とともに「私、きっと忘れません」と
歌っていた。

空にも、水たまりにも、星は見つけられる。
今ここにいること、与えられたことに感謝しながら、
目指す方向を見据えよう。

心の中の星も、年を重ねるけれど、
輝きは見たもの、感じたものの分、強くなるはず。
まだまだ学ぶべきことは多い。
私にはやはり、
何億光年の「授業」が必要なのかもしれない。