名脇役な色。

「ボケ」というと
どんなイメージがあるだろう?

相手を罵るときに使う言葉。
漫才のボケとツッコミ。
ぼんやりしてるときのこと。

そんな、ちょっとユーモラスな
「ボケ」の名をいただいた色がある。

「惚色」と書いて、「ぼけいろ」。
語感は少し乱暴で、
好ましくない色にも思われるが、
「惚」とは「ほれる」の文字。
つまり、「惚れる色」なのだ。
そう思うと、
一気に好感度が上がる気がする。

色は淡く渋い赤。
くすんだはっきりしない色であり、
はげた色の総称ともされている。

季節が秋へと進んで、
自然の色も少しずつくすんだり、
色褪せたりして、
この惚色になりつつあるように見える。

春とは異なるやわらかさで
色も空気も、
夏からゆっくりと色を落とし、
空気を冷やして、季節が進んでいる。

「惚け(ぼけ)」というと、
「この子は、まぁようよう遊び惚(ほう)けて」
と、叱られたことを思い出す。

子どものころ、
いつまでも日が暮れない夏から、
知らぬ間に秋になり、
いつもの時間に帰ろうとすると、
辺りが真っ暗になってしまい心細かった。

外が暗くなると、当然、
帰るやいなや、両親に怒られる。

子どもの頃は、秋が嫌いだった。

しかし、大人になると、
秋は涼しく、心地良く、
食べ物はおいしくて、
街を歩くと、季節の色合いも豊かに
目を楽しませてくれる。

惚れ惚れするような秋の景色。
枯れてゆく樹々の葉もあるけれど、
ふと、さし色のような美しい色も見つかる。

あ、惚色とは、その色に惚(ほ)れたり、
惚(ほう)けたりするのではなく、
他の色をひきたてて、
心惹きつける…
そんな名脇役な色なのかもしれない。

この秋は、惚色のことも見逃さず
紅葉や銀杏の鮮やかな色を愉しもう。

それが、子ども時代には得られなかった
大人の愉しみのひとつ、と言えるかもしれない。